医院開業した場合の社会保険は?効率的な貯蓄手段

2022.2.1

あなたは医院開業を成功させるために必要なものはなんだと思いますか?

高度な医療技術?患者から愛される人間性?新規患者やリピーターが途切れないようなマーケティング力?

 

もちろんすべて大切ですが、成功させるためにまず必要なのは経営を安定させながら財産を増やす方法を確立させることです。

どんなに素晴らしい医者でもお金がなくては新しい薬を入手したり、受付の方を雇えたりしません。

また、現在の経営のためだけではなく老後の蓄えなども必要となります。

 

今回は、医院開業にむけた社会保険についてや開業医のために効率的な貯蓄方法や特徴、検討してほしい医療保険などについて詳しく紹介していきます。

開業医の効率的な貯蓄方法とは

開業医が行う効率的な貯蓄方法として注目されているのは、保険と不動産の2つとそれぞれに対する税金対策なのはご存知でしょうか。

開業医でお金を稼いでいくことは重要です。

 

しかし、それに加えて稼いだお金をどのように経営や貯蓄(資産形成)に活かすかがポイントになってきます。

 

  • 医療法人化したとき
  • 事業承継を行ったとき
  • 現役をリタイアしたとき

 

医院開業時だけではなく、どんなライフステージであっても保険・不動産・税金対策は重要であり、注目されています。

それでは以降で、保険・不動産の2つと税金対策について詳しく見ていきましょう。

保険

保険は貯蓄と保障の2つの機能を兼ね備えており、開業医の貯蓄に優れている商品です。

医療経営を行うのであれば必要な事業資金が大きく、社会的責任の重さからもリスクマネジメントの一環として保険は欠かせません。

 

保険と聞くとかなり拒否反応を見せる経営者の方がいます。

しかし、保険は貯蓄と保障の両方を持ち合わせた商品としてかなり優れています。

 

保険には、さまざまなシステムの保証プランや貯蓄プランがあるため、節々のライフイベントでの資金作りや課税のタイムラグを作る観点でも一つくらい契約しておくべきでしょう。

不動産

不動産に関する収入源は、主に家賃を貰う賃料収入と土地や建物を売却する売却収入があります。

不動産の価値や家賃は物価の上げ下げを反映してくれるため、インフレによる貨幣の相対的価値の減少を回避できる資産です。

 

そのため、現役をリタイアした際にも稼ぎ続けてくれる不労所得を形成するうえで、不動産は外せないでしょう。

現金と比べると優位性や収益性には非常に大きなメリットがあります。

 

開業時もリタイア後も貯蓄に貢献してくれることから、早いうちに検討したい貯蓄方法です。

税金対策

開業医が効率的に貯蓄を行うにあたって、税金対策は必須です。

なぜなら、税金対策を行わないことで稼いだ金額の多くをとられてしまうことになるからです。

 

医療経営で発生した利益はもちろん、利益が出た場合はほぼ税金が発生するのは知っているでしょう。

どれだけ多くの資金形成をしても、そのほとんどを税金として支払ってしまえば資金形成をする意味がなくなってしまいます。

 

最近は、経済取引の複雑化から税制が難しくなっており、限られた財源からの税収確保を行うため今まで使えていた節税対策が封じられている場合があります。

限られた収入の中からできるだけ多くの資産形成を行うためには、いかに節税を行い、手元に資産を残すかが重要です。

貯蓄手段の特徴とポイント

それでは、節税などを意識しながら、現役リタイア後の貯蓄手段の特徴とポイントを見ていきましょう。

個人の開業医にとって、税制優遇を受けられてリタイア後の貯蓄ができる一石二鳥の手段は、主に以下の3つあります。

 

  1. 小規模企業年金
  2. 国民年金基金
  3. 個人型確定拠出年金

 

上記の3つは、支払ったすべての掛金が所得控除になります。

そのため、所得税と住民税が軽くなるだけではなく、実際にこれらのお金を受け取る際には退職金や公的年金として扱われるため税制上の優遇措置が受けることが可能です。

 

以降では、3つの貯蓄手段についてより詳しく説明します。

小規模企業年金

小規模企業年金とは小規模企業共済法に基づいた制度です。

加入資格は、家族を含まない常勤の従業員が5人以下の個人事業主などとなっています。

 

加入時は5人以下で加入後に規模が拡大し、従業員数が増えた場合、脱退する必要はありません。

しかし、常勤の従業員数が5人以上で加入はできないので、小規模企業年金に加入を希望するのであれば従業員数が5人以下のときに加入しておきましょう。

 

小規模企業年金は今から説明する国民年金基金と個人型確定拠出年金と異なるポイントは以下の3つです。

 

  1. 加入者の都合でいつでも解約できる
  2. 納付した掛金の総額以内であれば事業資金の貸付ができる
  3. 支給要件は事業の廃止であり65歳以上など年齢に関する制限や制約がない

 

このような利便性のよさは小規模企業年金の特徴です。

注意点として、あくまで小規模な企業の年金積立のため医療法人を設立すると脱退となってしまいます。

 

医療法人化するまでの貯蓄手段として使用するのであれば問題ありませんが、医療法人化後は別の貯蓄手段を取り入れなければいけません。

国民年金基金

国民年金基金とはサラリーマンなどの厚生年金&国民年金に加入している方、自営業者などの国民年金のみに加入している方の貰える年金の金額の差をなくすための上乗せ年金です。

 

加入条件としては、国民年金を支払っているかどうかです。

厚生年金を支払っている方は加入できません。

 

自由なプランと口数で加入でき、加入したあとでも口数は増減できます。

ただし、デメリットは以下の2つです。

 

  1. 自分の都合で脱退や途中解約できない
  2. 納めた掛金は年金受給年齢になるまで受け取れない

 

年金の受給開始年齢は、65歳から(A型、B型、Ⅰ~Ⅱ型)と60歳から(Ⅲ~Ⅴ型)があり、国民年金基金に加入するときにどの型を選択するか決めます。

 

1口目はAまたはB型の終身年金(被保険者が亡くなるまで一生涯受け取れる年金)から選び、2口目は自由に組み合わせて加入可能です。

小規模企業年金と小型確定拠出年金の中で、唯一終身年金を選べます。

個人型確定拠出年金

個人確定拠出年金は、確定拠出年金法に基づき国民年金基金連合会が実施しているものです。

iDeCoとも呼ばれています。

 

年金の掛金の運用方法を自分で決めたい方は、こちらの個人型確定拠出年金を検討してください。

小規模企業年金や国民年金基金と比べ、比較的新しい制度になります。

 

今までの年金制度は、国や企業が責任を持って集めた年金資金を運用していました。

しかし、個人型確定拠出年金は加入者である自分が自己責任で運用商品を選び、運営リスクは自分が背負わなくてはいけません。

 

事務費などの発生した手数料も加入者である自分の負担となります。

運営実績によって貰える年金額が決まるため、年金の受け取り年齢になったときにいくら貰えるかははっきりわかりません。

 

また、個人型確定拠出年金は基本的に一度納めたお金は途中で引き出せません。

ただし、例外として拠出期間が3年以下または個人別管理資産額が50万以下などの条件が揃えば、脱退一時金を受け取れます。

 

支払った掛金は正規の企業共済等掛金控除の対象となり、給付金を年金として受け取るときには公的年金等控除、一時金を受け取るときには退職所得課税が適用されます。

そのため、節税効果を得られるのです。

クリニックにおける社会保険の選択肢とは

クリニック経営者の多くは、社会保険として「協会けんぽ」と「医師国保」の2つから選ぶ場合が多いです。

開業した医院の常勤者が5人以上だった場合は、厚生年金保険の強制適用事業所になるため社会保険の加入は法律で義務付けられています。

 

厚生年金に加入する場合は、健康保険も合わせて加入になります。

常勤者が4人以下の場合、社会保険の加入は絶対ではありませんが希望すれば加入もでき、多くの医院は社会保険を選択する場合が多いです。

 

社会保険に加入すると、職員募集案件に”社会保険完備”と記載できるため、福利厚生が充実した会社として選ばれやすくなるのでいい職員が集まりやすくなります。

ここでは、協会けんぽと医師国保のメリットやデメリットを詳しく紹介します。

協会けんぽ

協会けんぽとは都道府県ごとに運営を行っており、会社員であれば通常加入する保険です。

医院開業と同時に厚生年金へ加入するのであれば、保険は自動的に協会けんぽに加入されます。

 

協会けんぽに加入するメリットは以下の6つです。

  1. 自家診療の場合でも保険請求ができる
  2. 給与+通勤費の合計で保険料が決まるため給与が低い場合負担が軽い
  3. 扶養家族の保険料は負担しなくていい
  4. 育児休暇中の保険料は免除制度がある
  5. 傷病・出産手当金の受給制度がある
  6. 職員の安定雇用に繋がりやすい

上記のように、加入者の財政状況や環境によって、医院の運営をきめ細かく自主的に行えるのが利点と言えるでしょう。

 

一方、協会けんぽに加入するデメリットは以下の3つあります。

 

1.事業主が保険料の半額を負担する必要がある

2.給与+通勤費に応じて決まるため、給与が高い職員に関しては負担額が大きくなる

3.賞与額にも保険料がかかりこちらも半額は事業主が負担

 

事業主が負担する保険料が職員によって左右される点が、人によっては欠点と感じる社会保険です。

そのため、従業員数が少ない場合には協会けんぽに加入したままでよいと言えます。

医師国保

医師国保とは、一定の条件をクリアした場合に加入できる健康保険です。

条件は都道府県医師会員であることや、組合規約が定めている地域に住んでいるなどがあります。

 

医師国保に加入するメリットには、以下の3つがあります。

  1. 事業所の保険料負担がない
  2. 保険料は一律のため給与が高い方に関しては負担が少ない
  3. 賞与には保険料はかからない

各組合員の保険料が収入に関係なく決まっていることから、国民健康保険と比較して保険料が割安になるケースが多いです。

 

一方、医師国保に加入するデメリットには、以下の7つがあります。

  1. 自家診療の場合保険請求できない
  2. 保険料は一律のため給与が少ない方には負担が大きい
  3. 扶養家族に人数に応じて保険料は増加する
  4. 育児休業中にも保険料は一律かかる
  5. 傷病・出産手当金は受給制度がない(傷病手当金に関しては組合によってはある)
  6. 従業員の居住地によっては加入できない
  7. 同世帯の方は全員医師国保に加入しなければいけない

協会けんぽに比べてデメリットになり得る要素が多く、場合によってはメリット以上の効果を感じにくいと感じるでしょう。

協会けんぽと医師国保のどちらがよりメリットが大きいか、デメリットが小さいかをしっかりと検討したうえで決めることを推奨します。

どのような医療保険がいいのか

医療保険には、主に「公的医療保険制度」と「民間保険会社の医療保険」の2種類があります。

公的医療保険制度は必ず加入しなければいけないため、保険内容などを見て不安があれば民間保険会社の医療保険に加入しましょう。

 

公的医療保険制度は社会保険の一つで社会政策として国や地方自治体が行います。

以降では、公的医療保険制度と民間保険会社の医療保険について簡単に説明します。

公的医療保険制度

公的医療保険制度の加入は法律で強制加入が義務付けられています。

加入の目的は生活の安定や福祉の向上です。

健康保険や高額医療費制度などがあります。

 

病院に行ったときに負担額は3割(一部例外あり)だけを支払っていると思いますが、これは公的医療保険制度に加入しているためです。

高額医療費制度は収入によって毎月の医療費の上限が抑えられるため、高額な治療であっても安心して受けられます。

民間保険会社の医療保険

民間保険会社の医療保険は加入の義務はなく、個人の判断による任意加入です。

公的医療保険制度だけでは不安な場合や、不足している部分を補填するために必要な種類や制度のみを選択して加入します。

 

以前は死亡保障に特約を付帯する保障が中心でしたが、第三分野の完全自由化によって、日本国内の生命保険会社・損害保険会社であっても医療保険を取り扱えるようになりました。

 

民間保険会社が取り扱う医療保険の保障サービスは、以下のものに影響を受けて新しい医療保険や商品改定が行われます。

  1. 国の政策
  2. 社会情勢
  3. 医療技術の進歩

加入は任意ですので、「充実した医療を受けたい」「重い病気やケガに備えたい」という方は加入するか一度検討してみるとよいでしょう。

メリット・デメリットを理解して最適な貯蓄方法を採用

医療開業を成功させるためには、今の状態に最適な貯蓄方法を見つけて採用するのがどれだけ大切かわかってもらえましたでしょうか?

 

働いてお金を増やしたり、貯蓄を増やしたりももちろんできます。

しかし、体は一つしかないため必ず限界があります。

 

そのため、医院開業を成功させるためにも、より効率的に貯蓄方法や社会保険を利用しましょう。

しかし、自分に最適な貯蓄方法や医院開業に関してもっと相談したい意見を聞きたい方もいるでしょう。

 

そんな方はぜひ”プラザ薬局”にご相談ください。

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