電子カルテを導入する5つのメリット
2022.2.1
多くの大学病院や地域の基幹病院で導入されている「電子カルテ」。
導入したいと思っていてもコスト面からなかなか踏み出せない開業医の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、開業医の方が電子カルテを導入するメリットや、多種多様の電子カルテの中から自身のクリニックに最適な電子カルテを選ぶ方法をご紹介いたします。
電子カルテとは
「電子カルテ」とは、紙のカルテに書かれていた診療内容や画像・紹介状などの患者さんに関する情報を電子化し管理や記録をするシステム、もしくはその記録した情報を指します。
カルテをデータベース化することで、紙のカルテに比べて編集や検索も簡単にできるようになりました。
電子カルテには医療情報だけではなく会計システムや薬剤システムなども連携が可能です。
紙のカルテと比べ業務の効率化や管理負担の軽減など多くのメリットがあります。
電子カルテを導入する時は、電子保存の3原則「真正性」・「見読性」・「保存性」を満たさなければなりません。
電子保存の3原則とは以下の3つを指します。
- 「真正性」
- 「見読性」
- 「保存性」
参照:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第5版
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
原則①真正性とは
電子カルテでは、「いつ、誰が」情報を記録し、「いつ、誰が」情報を修正したのかをわかるようにしておくことが求められています。
システムにログインするにはアカウントの入力が必要であるため、「いつ、誰が」入力や修正をしたのか明確になる仕組みです。
真正性のポイントは主に以下の4つがあげられます。
- 責任の所在の明確化
- 完全性の確保
- 電子署名・タイムスタンプの利用
- 改ざん・ハッキングのリスクに留意
責任の所在を明確化することは、仕事を円滑に行うために重要ですよね。
原則②見読性とは
見読性とは、電子記録媒体に保存されているデータを、紙カルテと同じように「見え・読め」なければならないというものです。
見読性のポイントは主に以下の事柄があげられます。
- 「診療」「患者への説明」「監査」「訴訟」などの際に、必要なタイミングで取り出せる
- バックアップなどシステム全般の保護対策が必要になる
- シムテム更新の際に、新・旧システムの間で記録内容が異なってはならない
システムの更新の際は、記録内容が異ならないように注意しなければなりません。
原則③保存性とは
電子カルテはデータさえ壊れなければ、いつでも閲覧できるようにしておかなければなりません。
「真正性」・「見読性」のどちらも踏まえて保存していれば、「保存性」を満たしています。
ただし、条件として、「患者さんの最後の来院日から5年間は閲覧可能状態で保存」しておかなければなりません。
保全性を脅かす原因は主に以下の4つがあげられます。
- データ保存自体が通信障害などでできない可能性
- サーバーなどの記録媒体、ディスプレイやパソコンなどの設備の劣化による読取が不完全な状態
- コンピュータ・ウイルスや不正なソフトなどによる不適切な管理での情報の喪失
- システム更新時における不完全なデータの移行
保存性を確保するために、それぞれの原因に対する技術面・運用面での対策を施す必要があります。
電子カルテを導入するメリット
電子カルテを導入は、紙のカルテと比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは主な5つのメリットをご紹介します。
- 業務の効率化
- 検査結果の取り込み
- カルテの保管スペース縮小
- リアルタイムでの情報共有
- 間違い防止
詳しく見ていきましょう。
メリット①業務の効率化
メリット1つ目は、業務の効率化です。
紙のカルテでは医師が記入したものが、検査や会計に移動するまでにタイムロスが発生していました。
電子カルテなら患者さんごとにすべての情報を紐づけられ、どこからでもその情報を閲覧できるので業務の効率化が図れます。
また、紙のカルテだと万が一紛失するリスクもありますが、電子カルテなら紛失もありません。
電子カルテを導入することで改善される待ち時間対策についてこちらで紹介していますので、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
メリット2つ目は、検査結果の取り込みができることです。メリット②検査結果の取り込み
検査を外部に依頼した結果を電子カルテに取り込めます。
検査会社によってはオンラインで検査の結果をアップロードできるので、取り込みも不要な場合があります。
メリット③カルテの保管スペース縮小
メリット3つ目は、カルテの保管スペース縮小されることです。
紙のカルテの保管スペースに困っている開業医の方も多いでしょう。
電子カルテならデータはサーバー上に保管されるため今までのような保管場所は必要なくなります。
メリット④リアルタイムでの情報共有
メリット4つ目は、リアルタイムでの情報共有されることです。
入力や編集されたものは即座に反映されるので、紙のカルテのように届くまで確認ができない時間的な制限がなくなり、リアルタイムで情報の確認や処理ができるようになります。
会計までの一連の流れもよりスムーズになり、患者さんの待ち時間の短縮にもつながるでしょう。
メリット⑤間違い防止
メリット5つ目は、間違い防止になることです。
紙カルテでは医師の文字が判別しにくく伝達していくうえで間違いが発生してしまいました。
電子カルテなら正確な情報を伝達・把握でき、間違いによる事故を防げます。
入力もテンプレートがあり、薬の名称などを検索し、選択肢から選んで入力できるのも間違いを防げるポイントです。
電子カルテの4つのデメリット
電子カルテは業務が効率的に行え、一見すべてが紙カルテより優れているように見えますが、導入前にはデメリットも把握しておく必要があります。
電子カルテのデメリットは以下の4つがあげられます。
- 操作に慣れないと難しい
- 停電した時、利用ができなくなる
- 運用コストがかかる
- 統一された規格がないため医師によりバラツキがある
1つずつ見ていきましょう。
デメリット①操作に慣れないと難しい
デメリット1つ目は、操作に慣れないと難しいことです。
長年紙のカルテに慣れている医師や職員にとって、初めは電子カルテに戸惑うかもしれません。
電子カルテにはさまざまな機能があり、使いこなすまでには多少時間がかかってしまうのは覚悟しておくべきです。
デメリット②停電時に利用ができなくなる
デメリット2つ目は、停電時に利用ができなくなることです。
停電を想定して、非常用電源を備える、非常時は紙カルテで対応するなど日頃から訓練しておくと良いでしょう。
デメリット③運用コストがかかる
デメリット3つ目は、運用コストがかかることです。
電子カルテは、導入時のコストの他に、月々のランニングコストもかかってきます。
そのため、小規模の病院や、診療所では普及がなかなか進まない状況です。
デメリット④統一された規格がないため医師によりバラツキがある
デメリット4つ目は、統一された規格がないため医師によりバラツキがあることです。
医師によって、電子カルテの記載内容に長短のバラツキが考えられます。
病院内で運用方法を統一しなければならないケースも出てくるでしょう。
電子カルテを選定する際のポイント
現状、電子カルテシステムの普及はどのくらいまで進んでいるのでしょうか。
平成29年時点の厚生労働省のデータによると、病院の場合、400床以上で85.4%、200〜399床で64.9%、200床未満は37.0%と大病院以外ではまだまだ普及率は低い状態です。
一方、一般診療所は41.6%となっており、海外での診療所の普及率(アメリカ80%、スウェーデン90%、イギリス99%)と比べると、日本の診療所における普及率はまだまだ低いと言えます。
日本でも今後は新規開業や世代交代で電子カルテの普及率が上がるでしょう。
とくに新しく開業する診療所において、普及率は8〜9割になると言われています。
診療所向けの電子カルテを扱っているメーカーは多数存在しています。
そのため、開業を検討している医師の方はどの電子カルテを導入するか、早い段階で決めておくと良いでしょう。
ここでは、開業医の方が電子カルテを選ぶ時のポイントをご紹介します。
電子カルテを選ぶポイント2つは以下の通りです。
- クラウド型かオンプレミス型か
- 大手メーカー製か日本医師会作成のORCAか
詳しく見ていきましょう。
ポイント①クラウド型かオンプレミス型か
選ぶポイント1つ目は、クラウド型かオンプレミス型かです。
電子カルテには大きく分けてクラウド型とオンプレミス型の2種類があります。
クラウド型は院内にサーバーは置かず、インターネット上でデータ管理するシステムです。
一方オンプレミス型は、サーバーを院内にサーバーを設置します。
そのため初期にかかるコストはオンプレミス型の方が高額になる傾向にあります。
クラウド型の電子カルテのメリットは以下の4つです。
- 価格が比較的安い
- データ消失のリスクが低い
- インターネット環境があればどこからでもアクセス可能
- サーバーに異常があった時素早く対応してくれる
詳しく見ていきましょう。
価格が安い
オンプレミス型の電子カルテの場合は、院内にサーバーを完備する必要があるため初期費用は300〜500万円程度かかると言われています。
それだけではなくランニングコストとして更新作業や保守も依頼する必要があります。
その一方、クラウド型なら外部のサーバーを利用するので、毎月の運用費以外の初期費用は、オンプレミス型に比べてかなり抑えることが可能です。
事業者によって、プランや費用はさまざまですので必要な機能やサポート内容を比較して検討しましょう。
データ消失のリスクが低い
万が一、病院や診療所が地震や火事などの災害に遭ってしまった場合にも、電子カルテ情報はインターネット上に保存されているため、消失してしまうリスクはありません。
また、サーバーのトラブル対応やバックアップなどのメンテナンスを病院で行う必要がないため、人件費の削減や業務の効率化が図れます。
インターネット環境があればどこからでもアクセス可能
クラウド型電子カルテなら、インターネットがつながる環境さえあれば、どこからでもアクセスできるのが最大のメリットと言えるでしょう。
例えば、担当医師が外出している場合にも、外出先からカルテを確認して適切な指示を出せます。
また、在宅医療を行っているような病院で、急な夜間診療が発生した場合でも、スマートフォンでカルテの確認ができるようになります。
サーバーに異常があった時素早く対応してくれる
クラウド型なら病院側でサーバーを監視・管理する必要がありません。
それぞれの事業者の専門の部署がサーバーをチェックしているので、異常が発生した場合は迅速に対応してくれます。
次にクラウド型電子カルテのデメリットを見ていきましょう。
クラウド型電子カルテのデメリットは以下の通りです。
- オフラインでは使えない
- 自由にカスタマイズできない
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
オフラインでは使えない
インターネット環境下での利用に限られているため、何らかの事情でオフラインになった時、電子カルテが使えなくなります。
そのような場合も想定した対策(バックアップ回線やモバイルWiFiなど)を検討しておきましょう。
自由にカスタマイズができない
オンプレミス型は、病院の目的に応じた電子カルテを自由にカスタマイズできます。
一方、クラウド型は共有のサーバーを利用するため、デザインや機能などある程度決まったものの中から選択します。
そのため、さまざまな事業者の電子カルテを比較して、自身の病院・診療所に合ったシステムを導入するようにしましょう。
ポイント②大手メーカー製か日本医師会作成のORCAか
選ぶポイント2つ目は、大手メーカー製か日本医師会作成のORCAかです。
電子カルテは多くの事業者が取り扱っています。
大きく分けると大手メーカー製か、日本医師会作成のOCRAに分類できます。
大手メーカー製
大手メーカー作成の電子カルテは、多くの場合レセコンと一体化したシステムになっています。
そのため、レセコンとのデータの連携が強く、受付と医師とのデータのやりとりが可能になるなど統合的なシステム作りができるでしょう。
日本医師会作成のORCA
一方、費用を抑えるなら、日本医師会作成のOCRAという比較的使用料の安いレセコンを使って、OCRAに対応している電子カルテを選択するのも1つの方法です。
ただし、連携できる内容などは大手メーカー製に比べて少なくなります。
メリットだらけの電子カルテ!
電子カルテについてメリットや選び方を見ていきましたがいかがでしたでしょうか。
今後開業をお考えなら、医師・スタッフの業務の効率化や患者さんの利便性などを考えても電子カルテは必須ツールです。
比較検討して自身のイメージに合った電子カルテシステムを取り入れましょう。
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