知っているだけで差がつく開業医の3つの節税手段

2022.2.1

勤務医・開業医にかかわらず、医師はサラリーマンに比べると所得が多く、その分高い税金も課せられる傾向にあります。

そのため、節税対策をした場合としない場合とでは、納税額に大きく差が出るケースも。

 

開業した医師の中には、会計事務所や保険会社の担当の方から節税対策として医療法人化をすすめられ、悩まれている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、節税対策として、必要経費に対する考え方や医療法人にすると節税になるのかどうかなどを解説しています。

開業医は節税対策が重要

開業医は自費診療のメニューを導入した場合などに収入が大幅に上がる場合があります。

日本の所得税は累進課税のため収入が増えれば増えるほど税率が高くなります。

税金だけでかなりの額になるでしょう。

 

収入の増加に伴い、所得税や住民税などの納税額が跳ね上がるシチュエーションも想定が必要です。

今後開業を検討し、収入の増加が見込まれる医師の方は、真剣に節税を考えてみる時期に差し掛かっているのかも知れません。

経費の考え方・経費で計上できるもの

勤務医の所得区分は「給与所得」です。

勤務していた病院で給与所得から所得税などの税金を差し引いた「給与」が支払われます。

 

一方、クリニックを開業した場合は個人事業主となり所得区分は「事業所得」です。
「事業収入」から「必要経費」などを差し引いたものが「事業所得」となります。

「事業所得」に対して所得税は課税されるので、「必要経費」が多ければ多いほど、納税額の元となる「事業所得」を減らせるのです。

 

開業医が計上できる「必要経費」にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは開業医が経費として認められている費用についてご紹介します。

 

開業医の必要経費

 

  1. 人件費
  2. 設備費
  3. 交際費
  4. 会議費
  5. 出張費
  6. 福利厚生費
  7. その他

 

1つずつみていきましょう。

必要経費①人件費

人件費とは、クリニックで働いているスタッフに対して支払われる給与や賞与のほか、社会保険料も含まれます。

病院の経費の中で最も多い割合を占めるものが人件費です。

必要経費②設備費

設備費は、クリニックの建物・土地・車両などに関する費用を指します。

精密機械の修繕費・リース代・固定資産に対する減価償却費も設備費にあたります。

人件費と並び、クリニックの支出の大部分を占める経費です。

必要経費③交際費

交際費とはクリニックの事業に関連した会社や相手に手土産やお中元・お歳暮などを送る場合や、近隣のクリニックや大学病院の医師たちとの食事代も交際費として認められます。
ただし、税務調査でチェックされる項目なので、領収書の管理(いつ・誰と・何のためになど)をきちんと把握しておく必要があります。

必要経費④会議費

会議に関する費用です。

例えばお茶、コーヒー、資料コピー代やレンタルスペースなどの使用料なども会議費に含まれます。

必要経費⑤出張費

医師として学会などに参加する機会も多いでしょう。

学会参加のための旅費やホテル代なども出張費として計上できます。

必要経費⑥福利厚生費

クリニックで働くスタッフの福利厚生に関する費用です。

例えば健康診断や研修費などが福利厚生費にあたります。

必要経費⑦その他

学会に参加するために購入したスーツ代、事業に使う車やガソリン代なども必要経費として認められます。

ただし、プライベートなものと混同しないよう注意し、正しい経費計上が重要です。

おすすめの節税対策

開業して収入が増加すると、支払う税金も比例して増えてきます。

収入の多い医師の税金は多額になるため、節税を意識するのとしないのとでは支払う税金に大きな差が生じるでしょう。

 

前述した通り、「事業所得」は「事業収入」−「必要経費」−「所得控除」を元に算出するので、必要経費と同様に所得控除も意識していくと節税効果が高まります。

 

ここでは開業医が今からでも簡単にできる節税対策をご紹介します。

 

開業医におすすめの節税対策3選

 

  1. 所得控除を増やす
  2. 所得分散を見直す
  3. 償却資産を廃棄する

 

1つずつ詳しく解説していきます。

節税対策①所得控除を増やす

節税をするためにまず検討するべきものは、所得控除を増やすための制度の活用です。

 

具体的には、iDeCo(確定拠出年金)や、小規模共済制度・倒産防止共済などに加入すると掛け金が所得控除となります。

また、年間10万円以上の医療費が発生した場合に適用される医療費控除や、ふるさと納税なども所得控除を増やすために効果的な節税方法です。

 

 

 

小規模共済制度とは

 

クリニックの開業医には退職金がありません。

 

そのため、リタイア後の資金は、現役の時に貯蓄しておく必要があるでしょう。

そのため、小規模なクリニックや企業の経営者の方のための公的な退職金制度「小規模企業共済」の利用も検討しましょう。

 

小規模企業共済は毎月の掛け金が所得控除の対象となるので、リタイア後の退職金が準備できるだけでなく節税対策としても有効な制度です。

掛け金は、1,000円〜70,000円の間で、500円単位で自由に設定が可能です。

確定申告をすれば1年間支払った全額が所得控除対象となります。

 

また、退職金を受け取とるには、一括で受け取る場合は「退職金」、分割で受け取る場合は、「公的年金」の扱いとなります。

それぞれ一定の非課税部分があるため受取時の税金優遇を受られるので、節税対策としても優れた制度といえるでしょう。

節税対策②所得分散の見直し

同一世帯で3,000万円の所得があったとすると、夫のみが3,000万円受け取っている場合と、家族3人でそれぞれが1,000万円ずつ受け取るケースでは、所得税額に差が生じます。

 

所得税は所得が多いほど多くなる仕組みのためです。

そのため家族内での所得分散も考えていく必要があります。

節税対策③償却資産を廃棄する

償却資産税は1月1日時点で所有している資産に課税されます。

そのため不要な資産は前年の12月31日までに廃棄してしまえば課税対象にはなりません。

 

クリニックにおける償却資産とは、レントゲン装置や医療設備・モニター・パソコン・駐車場設備・冷暖房・コピー機などが当てはまります。

償却資産はそれぞれのクリニックで「固定資産台帳」を作成した後、市町村に提出・申告しなければなりません。

 

「固定資産台帳」が開業時に作成したままになっていると、すでに廃棄した設備に対しても固定資産税が課税されてしまっているケースがあります。

節税のためにも、一度「固定資産台帳」と現在保有している設備に相違がないか確認し、廃棄しているものは台帳からも消去しておきましょう。

クリニックの医療法人化は節税対策にもなる

クリニックの収入が安定してきたら、医療法人化も節税対策として有効な手段となります。

医療法人化が具体的にどのような節税対策になるのでしょうか。

 

医療法人化による4つの節税効果は以下の通りです。

 

  1. 所得税から法人税に変わる
  2. 給与所得控除が適用される
  3. 退職金を受け取れる
  4. 所得分散で課税額縮小

 

順を追って見ていきましょう。

効果①所得税から法人税に変わる

個人経営のクリニックは、収入が増えれば増えるほど税率が上がる累進課税が課せられ、最大税率は55%にものぼります。

 

一方、医療法人になると法人税となり、税率は一定で所得税よりも低く17.59%(800万円を超えた場合のみ27.21%)に設定されています。

税率の低さが、医療法人化する最大のメリットともいえるでしょう。

 

具体例として、「個人事業所得3,000万円」の場合と「医療法人課税所得1,500万円+院長給与所得1,500万円」の場合を比較してみます。

個人経営の場合は所得税などの合計が1,220万円、医療法人の場合、所得税など386万円、法人税450万円です。

 

合計税額は医療法人の方が384万円少ない試算になります。

効果②給与所得控除が適用される

クリニックを開業すると個人事業主となりますが、医療法人化を行うと医療法人から給与を受け取るようになります。

所得区分は「事業所得」ではなく「給与所得」です。

そのため、勤務医と同様に「給与所得控除」の適用が受けられますが、給与所得額によって控除額は違ってきます。

効果③退職金を受け取れる

個人経営ですと退職金はありません。

しかし、医療法人なら法人として蓄えた分を退職金として受け取れます。

退職金から控除額を引いて、残った額の1/2に課税されるので、節税になるといえます。

効果④所得分散で課税額縮小

医療法人からの給与が理事長に集中してしまうと、個人としての納税額が高くなってしまいます。

そのため、配偶者やお子様を理事にして役員報酬として所得を分散すれば、家族単位で見た場合に節税となるでしょう。

医療法人化すれば特定支出控除が受けられる

開業医ならば、事業にかかった支出を経費として計上できます。

一方、医療法人化した医師や勤務医は、「給与所得控除」で必要経費が控除される制度がありますが、実際にかかった金額の方が多い場合も少なからずあるでしょう。

 

その時に使える制度が「特定所得控除」です。

具体的には、「特定支出」の額の合計額が、その年の「給与所得控除額の1/2」を超えた場合、超えた分の金額を経費にできる制度をいいます。

 

例として、給与所得1,000万円、給与所得控除は220万円の場合、1/2の110万円が特定支出控除適用額となります。

特定支出が150万円だとすると、特定支出控除は40万円(150-110)となり、課税所得を40万円減らせるのです。

 

経費として認められる代表的な「特定支出」は、以下のようになっています。

 

  1. 通勤費
  2. 転居費用
  3. 研修費・資格取得費
  4. その他業務上必要なもの

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

特定支出①通勤費

出張・通勤のための新幹線代や、単身赴任時に自宅へ帰宅するための交通費も含まれます。

ただし、勤務先から精算される交通費は対象外です。

特定支出②転居費用

転勤のためにかかった引越代などは経費になります。

ただし、勤務先から精算される転居費は対象外です。

特定支出③研修費・資格取得費

職務のために必要な技術や知識を得るための研修費や、職務に関係する資格を取得するための支出も経費として計上できます。

特定支出④その他業務上必要なもの

書籍(電子書籍含む)・業務上に必要な白衣・近隣の医師との食事代なども経費となります。

なお、図書費、衣服費及び交際費などの合計額が65万円を超える場合には、65万円が上限となるため注意が必要です。

医療法人化や特定支出を活用して節税対策を強化

開業医の節税対策についてご紹介いたしましたがいかがでしたでしょうか。

所得控除額を増やす方法や償却資産を見直す方法など手軽にできるものから、医療法人化する大掛かりな方法まで、節税対策にはさまざまなやり方があります。

 

少し意識を変えるだけで生涯年収に大きく影響が出てくるかも知れません。

まずはご自身の取り入れやすい方法で節税対策を始めてみませんか。

 

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