開業医が退職金を受け取りたいと考えた場合に取るべき選択肢
2022.4.1
一般的に、サラリーマンなどが定年退職する際、退職金を受け取れます。退職金をもとに新たな資産運用や投資を始めたり、住宅ローンの返済にあてたりする方もいるでしょう。
ですが、開業医の場合、退職金を受け取ることはできるのでしょうか。
そこで将来的に退職金が受け取れるのか不安に感じている開業医のため、おさえておくべきポイントについて紹介します。そもそも退職金は、誰が誰に対して支払うものなのかよくわからないと感じている方も参考にしてください。
この記事を読むことにより退職金について理解し、将来に備えられます。
開業医は退職金をもらえるのか?
残念ながら、自分が経営者である開業医の場合、退職金は受け取れません。そもそも、退職金とは会社から支給されるものであり、自身が経営者だとそれを支給してくれる人がいないからです。
同じ医師であったとしても、勤務医であれば問題なく受け取れます。勤務医の場合、相場として1,000~2,000万円程度の退職金が受け取れるとされているので、全く受け取れないと不安に感じる方もいるはずです。
特に、若いころに独立開業した方はなかなか引退後のことまで考えられません。早い段階で老後の資産を蓄えておいたほうが良いので、人生設計をしながら資産形成について検討してみてはいかがでしょうか。退職金がない分、定年もないので、生涯現役で働くことはできます。
退職金を受け取りたいなら法人化
開業医でも、将来退職金を受け取れる方法があります。それは、医療法人になった場合です。医療法人とは、各都道府県知事の許可を得て設立されるものであり、申請するためには医療法の規定を満たしていなければなりません。
規定の中にはいくつか満たさなければならない項目はあるのですが、例えば、原則として理事を3名以上、監事を1名以上設置しなければなりません。他にもいくつか人的要件や施設・設備に関する要件、資産の要件などが定められており、それらを満たしたうえで申請を行うことになります。
都道府県によっても違いがありますが、仮申請から認可証が交付されるまでは5ヶ月ほどの期間が必要です。さらに医療法人設立説明会は年に2回程度しか開催されていないため、タイミングが合わないとなかなか申請ができません。
ですが、医療法人になれば、ドクターは「個人事業主」から「給与所得者」になり、病院から給与を受け取る立場になります。そのため、退職慰労金や特別功労金、死亡退職慰労金・弔慰金・特別功労金などを受け取れるのが特徴です。
それぞれどのようなお金で、どの程度受け取れるのかについて紹介しましょう。
退職時に受け取れる退職慰労金・特別功労金について
退職時に受け取れるのが、退職慰労金や特別功労金です。なお、実際にはまだ退職していなかったとしても、地位・職務の内容変更によって実質的に退職扱いとなるケースもあります。こういった場合は「みなし退職」として認められ、退職金の支払い対象です。
退職慰労金や特別功労金についてそれぞれ特徴を解説します。
退職慰労金
退職慰労金とは、役員である方に対し、退任時に支払われるお金のことです。
一般的には「最終報酬月額×役員としての在任年数×功績倍率」によって金額が算出されます。功績倍率はケースによって異なるのですが、3倍程度が一つの目安です。
クリニックとして将来的なトラブルを避けたいと考えているのであれば、あらかじめ「役員退職慰労金規程」を作っておくことをおすすめします。社員総会や理事会で作成・承認を受けましょう。
法人側からすると、役員の退職慰労金は、全額損金対象です。できるだけ法人税を節税したいと考えた時にも活用してみると良いでしょう。
役員に対し退職慰労金を支給する際には、正当な手続きを踏まなければなりません。この手続きを省いてしまった場合、前述した損金対象として認められなくなってしまうため、注意しなければなりません。あらかじめ定めておいた役員退職慰労金規程をもとに正しい支給が必要です。
特別功労金
特別功労金とは、その名の通り、特別な功労があった場合に支払われるものです。一般的に、退職金の30%を超えない範囲内で加算することになります。
死亡退職時に受け取れる死亡退職慰労金・弔慰金・特別功労金について
医療法人になったあと、創業者である医師が死亡してしまった場合、希望退職時に受け取れるお金があります。死亡退職慰労金・弔慰金・特別功労金について紹介します。
死亡退職慰労金
死亡退職慰労金については、通常の退職慰労金と同様に「最終報酬月額×役員としての在任年数×功績倍率」によって金額を算出します。功績倍率は、3倍程度です。
弔慰金
弔慰金は、業務上の死亡に該当するのか、業務外の死亡なのかによって計算方法が変わります。業務上の死亡だった場合、計算式は「最終報酬月額×36ヶ月」、業務外の場合は「最終報酬月額×6ヶ月」です。
正当な額で計算すれば、その額はすべて損金として算入できます。また、遺族が受給した金額分については、全額相続税非課税となります。
特別功労金
特別功労金は、死亡退職金の30%を超えない範囲内で加算することになります。節税を目的とした不当な金額は認められませんが、死亡退職慰労金と特別功労金については、損金算入の対象です。
遺族が受給した金額については「500万円×法定相続人の数」までは相続税の非課税分となります。
法人化は早期の検討が必要
いかがでしたでしょうか?開業医は退職金を受け取れるのかについて解説しました。法人化しなければ受け取れないので、退職金について検討する場合は医療法人になることも考えてみると良いでしょう。
手続きなどには時間がかかるので、早期に着手するのがおすすめです。
開業時に将来的に医療法人になることも検討したいのであれば、プラザ薬局までご相談ください。資金面に関する相談にも対応しているほか、税理士など専門家も紹介できるので、不安を解消したうえで開業を目指せます。
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